地方税滞納整理機構に名を借りた不当な徴税は許さない


 2011年4月以後、「西尾張地方税滞納整理機構」から、「滞納額を一括で払え」「3回までしか待てない」「誰かから借りてでも払え」「さもなければ差押え」と迫られ困ったという相談が寄せられています。どう考えたらいいでしょうか?

「分納中・納付相談中の方は機構に送らない」市町村が明言!
「払いたくても払えない」事情のある方は民商にご相談を!


◇「西尾張地方税滞納整理機構」とは?
  津島市などのホームページでは、「愛知県と西尾張地方9市町村で構成される市税等の滞納整理を行う専門組織」として、「督促など市からの催告に応じない人」「納税の相談をしても約束を守らない人」など“悪質”な滞納者を市町村から移管し、「財産を調査して差押えや公売の処分を強力に行います。また、滞納者の自宅などを捜索することも行います」としています。
  また機構の「運営要領」では、「基本方針」として
  ・差押えを前提とした納税折衝
  ・少額分納には応じない
  などきわめて厳しい姿勢が明記されています。
  しかし、ここにはいくつかの問題点とあいまいさがあるように思われます。

◇問題点@ 「払いたくても払えない」という善意の納税者まで「機構送り」!
 上記のような「機構」の方針は、税金を払えるのに払わないという滞納者には必要な措置かもしれませんが、収入減や生活苦で「払いたくても払えない」という事情のある納税者には不適切です。しかし市町村から「機構」に100件移管すると一律に決めたため、“悪質”な滞納者ばかりでなく「払いたくても払えない」という事情のある納税者まで「機構」に送られ、さまざまな問題が起きています。
  普通に考えれば、人口38万人の一宮市と、6万人の津島市・4千人の飛島村に、均等に「悪質」な滞納者が100人いるなどと考えるほうが無理というもの。こういうやり方を「機械的」な行政と呼ばずして何というのでしょうか。
  実際市町村によっては、「市役所と相談して約束どおり分納していた納税者まで『機構』に送られた」「最初は50万円以上の滞納という基準だったが、それでは数が足りなくなったので30万以上と基準を下げた」という話も聞こえてきます。納税者の実情から判断するのではなく、いわば“ノルマ”として「悪質」滞納者を「100人つくっている」という状況になっているとすれば、まさに本末転倒といわなければなりません。

◇問題点A 生存権が脅かされる「差押え」や脅迫じみた納税強要
 もともと払いたくても払えないという納税者に対し、「一括で払え」「3回で払え」といっても無理な話です。そんなことは「機構」だってわかっているはず。しかしそんな訴えには耳を貸さず「払わなければ差押え」と脅され「どこかから借りてでも払いなさい」と迫られる・・・こんなことがあれば「公権力」による「脅迫」としか言いようがありません。
  払いたくても払えないという納税者にとって、差押えられる「財産」とは、毎月の「給料」や「売掛金」などしかありません。給料はもちろん、自営業者の売掛金も、余裕のあるお金ではなく、毎月の仕入先の支払いや従業員の給料・そして生活費でみんな消えていくものです。これが差押えられてしまえば、従業員や仕入先・家族はいったいどうやって生きていけばいいのでしょう? まるで役所が失業者を作っているようなものではないでしょうか?(その分税金の負担が増えるぞ!)
  借りて払うというのも、納税者が自発的に努力するのならばともかく、税務当局が強要することは許されません。「借りて払うか、さもなければ差押え」と迫るなどの行為は、明らかに行き過ぎです。サラ金がそんなことをすれば、「他の借入で弁済することを強要」「支払い義務のないものに必要以上に取立てへの協力を要求」に当たり、貸金業法違反ということになります。よもや「機構」に、サラ金以上の取立てが許されるとは思えないのですが・・・

◇問題点B 納税者の訴えに耳を貸さない「密室」対応と独善体質
  実際に「機構」に呼び出された方の話では「毎月これだけ払うと説明しても『3回か、待っても1年で完納しなければ差押え』と聞く耳を持ってもらえなかった」というのがほぼ共通しています。また「どうせ『払えない』という言い訳に来たんだろう」「家や車のローンがあるから払えないというのは認められない。あくまで納税が優先だ」などという発言も聞かれます。
  しかし、国税庁の「納税の猶予等の取扱要領」では、妥当と認められる範囲の生計費や、生活や事業継続のために不可欠な返済は納付能力から除かれると明記しています。ぜいたくで買った外車というならともかく、事業や日常生活で必要な車の費用は認められてしかるべきです。
  しかし、「機構」は納税者と話をする際、頑強に納税者のつきそいを認めず、「密室」で納税者一人きりでないと話に応じません。そうなると納税者は、知識もなく「差押え」をちらつかされて話をさせるので、有効な反論をするのは難しいのが実態。なかには「滞納している人は犯罪者だ」と侮辱されたと訴える納税者もいますが、密室での発言のため機構側に「そんな発言はしていない」と否定されるとうやむやにされてしまいます。もし機構の「密室」対応が、自分たちの不当な言動をごまかしたり、納税者の正当な反論をさせないための措置だとすれば恐ろしいことです。
  実際私たち民商が「機構」に対し改善を要請するため9月に懇談を申し入れましたが、「機構」のS氏は「『機構』を悪と決め付けている団体とは懇談する必要を認めない」と話し合いすら拒否しました。批判を受けつけない恐るべき「独善」体質の象徴ではないでしょうか。

◇「地方税滞納整理機構」は滞納処分をすることができない!?
  こんな大変恐ろしそうな「機構」ですが、実はこの「機構」には何の法的な権限もないといったらびっくりでしょうか。でもこれは本当の話です。
  なぜなら「機構」は法律や条例などを根拠として設置された機関ではありません。関係自治体も認めるとおり「任意団体」です。いわば自治体職員で作っている「徴税研究サークル」のようなものなのです。だから「機構」が発行する文書には発行者として必ず「○○市長」など自治体の首長が記載されています。滞納処分も「機構」ではなくあくまで市町村長名で行われます。だから、津島市などのホームページで、あたかも「機構」が滞納処分を行う組織であるかのように記載しているのは、不正確といわなければなりません。
  問題は、これが責任の所在をあいまいにする隠れ蓑として利用されていることです。「機構」の不当な徴税実態を示して愛知県に是正を求めると「機構は任意組織であり、その責任は市町村にある」と逃げます。それではと市町村に行くと「『機構』に移管した事案には市町村は関わらない」と逃げます。そして「機構」はというと責任も権限もないのをいいことに(?)批判を受けつけず暴走しています。
  こんないい加減な滞納処分や脅しで、もし何かあったらどうするのでしょうか? 堂々と(実際の)責任の所在すら明らかにできないということが、「機構」の正統性のなさを浮き彫りにしています。

 
 

◇対策@ 自らの経営や生活を見直し、「これ以上滞納増やさない」納付計画つくり
  まず現状のお金の流れを見つめなおし、改善すべきものは改善し、納付計画を立てます。その際大事なことは、「これ以上滞納を増やさない」こと。今後発生する住民税や国保税・固定資産税の納期と金額を確認してそれを織り込んで納付計画を立てます。一生懸命過去の滞納を払っていてもその一方で新たな滞納が発生するようでは「納税の誠意」が疑われてしまいます。
  納付計画ができたらわかりやすい表にして、市町村や「機構」に示せるようにしましょう。

◇対策A 市町村にちゃんと相談に乗ってもらうよう働きかける
  納付計画ができたらさっそく交渉しますが、前に言ったように「機構」が聞く耳を持たないような対応しかしない場合は、それをただす責任は市町村にあるというのが筋です。
  もしあなたが「払う意思があっても一括では払えないが、分納を認めてもらえればいっしょうけんめい納税して滞納解消したい」というのであれば、市町村に自らの意思と計画を示して「機構」の対応の是正を求めましょう。
  そもそも「機構」は、「滞納処分を前提とした納税折衝」「少額分納に応じない」というのが基本方針です。それにふさわしくない事案は市町村が対応すべきです。
  ところが市町村は、「『機構』に送った事案は市町村では相談に応じない」とかたくなに拒否します。ここは最大のがんばりどころ。市町村の責任を明確にして交渉しましょう。
 そもそも、市町村であれ、「機構」であれ、「生存権を脅かす徴税はあってはならない」「納税者の実情に即した対応を取る」というのが国会等で公式に表明された政府の方針です(例えば平成22.3.24 参議院総務委員会 山下議員の質疑)。そしてちゃんと生活し営業を続けてこそ納税ができ、市町村の財政にもプラスになるはずなのです。

◇条件があれば「徴収の猶予」を申請する
  国税の「納税の猶予」に当たるのが、地方税法第15条「徴収の猶予」です。災害や病気・著しい損失やそれに類する事実があったため払えないという場合に、納税者の側から申請できます。
  申請先は市町村長であり、審査するのは市町村の責任です。
  ところが最近、市町村の「機構送り」の無責任が進んだのか、「徴収の猶予」の審査や申請すら「機構」に丸投げするという姿勢が見られますが、これはもってのほかというほかありません。
  「徴収の猶予」は法律で定められた納税者の権利であり、市町村が責任放棄することは許されません。さらに「機構」の「運営要領」でさえ「機構」の業務として「徴収猶予の審査」は一切触れられていません。逆に「徴収猶予」該当者は機構に引き継がないとさえ明記されているのです。
 せめて自分たちで決めたルールぐらいは守ってほしいものです。

◇相談は民商へ
  営業の見直しをするにしても、「機構」や市町村と交渉するにしても、一人で悩むのでなく、民商にご相談ください。
  民商でいっしょにがんばっている仲間がいっぱいいます。

 


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